十牛図 第三

語録提唱

十牛図 第三

2019-04-6

第三 見牛




声より得入し、見る処源に逢う。六根門着着(じゃくじゃく)、差(たが)うこと無し。
動(どう)用(ゆう)の中、頭頭(ずず)顕露す。水中の塩味(えんみ)、色裏の膠(こう)青(せい)。
眉毛(びもう)を眨(さつ)上(じょう)すれば、是れ他物(たもつ)に非ず。

黄鸎(こうおう)枝上一声々
日暖かに風和して岸柳青し
只(た)だ是れ更に回避する処無し
森森(しんしん)たる頭角画けども成り難し

 
声を聞き、色を見て、ついに根源に気づいた。
聞声悟道、見色明心のところです。ついに見性しました。実に嬉しい。先月お話したところでは、まだ理解に留まっていましたが、ついにそこを体得しました。主客未分、存在以前のところです。何も無い、無いということも無い世界です。境地の浅い深はありますが、根源を見たことに間違いはない。

六根門着着、差うこと無し。
六根の働きは、その時その場で誤ることはない。
見るまま聞くままに、自分と対象は一体であった。
 
動用の中、頭頭顕露す。
日常の中に悟りは現れている。
皆さんが今行っていること、それに成りきれば、即心即仏です。自他は一如です。それに成りきる。ここが重要です。
 
水中の塩味、色裏の膠青。
海水の中の塩や、絵の具の中の膠のように、日常に悟りは融け入っている。
我々が元来仏である事についに気づいた。数息観では数に成る。随息観では息に融け入る。無字をやっている方、無字とひとつに成る。そこには主体も対象もありません。己を見ずに、振り返らずに、成る。
 
眉毛を眨上すれば、是れ他物に非ず。
眼を開いてよくよく見れば、自他は一体であった。
天地同根、万物一体です。見るもの聞く音、自己となった境地です。
 
黄鸎枝上一声々
ウグイスが枝に止まり鳴いている。
何ともいえない境地です。
 
日暖かに風和して岸柳青し
日差しは暖かく、風は穏やかに、岸の柳はどこまでも青い。
これで本当に救われた。
 
只だ是れ更に回避する処無し
牛は目の前にいた。初めから逃げ出していない。
衆生本来仏なり。そこに気づいた。これを悟りといいます。しかし、これが意識以前のことなので分からない。原理的に分かれない。そう出来ています。だから体得するしかありません。
 
森森たる頭角画けども成り難し
見事なその角は、絵に描く事も出来ない。
この境地だけは、何とも表現できない。いちど体得する。それしかありません。