伝心法要 第四十四

語録提唱

伝心法要 第四十四

2018-05-1

道う事を見ずや、諸行無常、是生滅法と。勢力(ちから)尽くれば箭は還って墜ち、来世の不如意を招き得たり。争でか似かん無為実相の門より、一超に如来地に直入せんには。汝は是れ与麼の人ならざるが為に、古人の建化門に向かって広く知解を学ぶことを須く要すべし。志公云く、出世の明師に逢わず、枉(ま)げて大乗の法薬を服すと。汝如今、一切時中、行住座臥に但だ無心を学せ。久久にして須らく実に得べし。汝が力量小なるが為に、頓に超えること能わず。但だ三年五年或いは十年なるを得ば、須らく箇の入頭の処を得て自然に会し去るべし。

道う事を見ずや、諸行無常、是生滅法と。勢力尽くれば箭は還って墜ち、来世の不如意を招き得たり。
これは諸行無常偈の上の二句です。全ての存在は移り変わる。これは生滅の教えである。全ての存在は移り変わるということを君は知らないか。今は高官の地位を得ているが、それも一時の事、いずれは死んでしまう。そして来世には思い通りに行かない生が待っている。
争でか似かん無為実相の門より、一超に如来地に直入せんには。
無為実相の門から入れば、すぐに如来の世界に行ける。無為とは有為に対する言葉です。この現象世界、そして自分、すべて有為です。因縁により仮にあるもの。無為とはそれを離れたもの。永遠に変わらず、因縁によらず、その裏付けとなっているもの。
実相とは、真実の姿。ありのままの姿。実相無相という言葉があります。実相とは無相である、空である。因縁によらず、永遠に、宇宙一杯にあるこれ。伝心法要で言う心です。
この現象世界、そして自分も仮にあるものです。その裏には空がある。空の裏にはこの現象世界がある。色即是空、空即是色のところです。
汝は是れ与麼の人ならざるが為に、古人の建化門に向かって広く知解を学ぶことを須く要すべし。
君はこういう人間ではないから、パッと悟りの世界に入れるような人間ではないから、古人の方便の教えに学んでいる。
志公云く、出世の明師に逢わず、枉げて大乗の法薬を服すと。
志公が言っている。本物の師に出会っていないから、
あえて大乗を学んでいる。
汝如今、一切時中、行住座臥に但だ無心を学せ。
君はすべての時間、すべての行為の中で、ただ無心を学びなさい。
心と言うのは無心です。成りきった境地を心という。成りきると何も無くなる。その振り返らない心の状態、徹した境涯を学びなさいと。
久久にして須らく実に得べし。
長い時間かかるかもしれないが、いずれ分かるであろう。皆さんもいずれ気づきます。今無心を学んでいただいている。
汝が力量小なるが為に、頓に超えること能わず。
君が力不足であるから、今すぐにはそこのところが分からない。
但だ三年五年或いは十年なるを得ば、須らく箇の入頭の処を得て自然に会し去るべし。
三年修行し、五年修行し、十年もすれば悟りの入り口に立てる。糸口がつかめる。そこでもう一がんばり。
果実のように熟する時が来る。そして分かる時がくるであろうと。
とにかく無心を学ぶ。成りきることです。