主人公

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主人公

2020-01-25

普通、この言葉は物語の主役を指します。しかし、禅語では見聞きし、考える主体を『主人公』と呼びます。

   
昔中国に瑞巌和尚という方がいました。変わった方で、毎日自分のことを、主人公ーーと呼び、自分ではいと返事をしていたそうです。そして、はっきりしていろよーと呼び、またはいと返事をして、人に騙されるなよーー、はいはいと一人でしゃべっていました。
   
この瑞巌和尚、実はとても立派な方で、ふざけて一人芝居をしていたのではありません。この方は、本当の自分を呼んでいるのです。心を呼んでいるのです。主人公ーーと。
   
前に『不識』の解説をしました。自分の心は振り返っても探せません。ここにこうして働いているのに、探すと見つからないのが心ですと。自分の主体『主人公』も同じです。振り返ってもそこにはいません。呼んでいるものが呼ばれているものだからです。だから振り返らずに主人公ーーと。成りきって、はい。はっきりしているかーー、はい。最後の人に騙されるなというのは、自他の分別をするな、ということで、自他を分けるなよーー、はいはい。ということです。
  
禅の要諦は、振り返らずに成ることです。見ずに成る。そこに『主人公』はいます。